マネジメントの5つの基本要素をご存じでしょうか。私は30歳頃にこれを学び、マネージャーとして実践すべき5つの機能として覚えました。これは、フランスの経営学者ファヨールが提唱した5つの基本要素です。企業や組織を円滑に動かし、目的を達成するための管理活動の基本とされています。
その内容は、計画すること、統制すること、組織化すること、命令すること、そして調整することです。これらは、日常の業務活動の中で、管理職が無意識に行っていることかもしれません。これらは、意識して取り組むことが大切です。自分の計画は適切か、統制(コントロール)はどのように行っているかを都度確認することです。
また、チーム内の業務を割り当て、適材適所を考えて人員を配置します。さらに、5W2Hを意識して業務を指示し、部門長として他部門や経営陣との調整も行います。

特に重要なのは、最後の2つです。業務を指示する際は、チーム内の業務の割り当てや適材適所を踏まえ、一人ひとりに合わせて伝えなければなりません。細かく指示しなくても、自分で判断して行動できる社員がいる一方で、具体的に伝えなければ行動に移せない社員もいます。マネージャーは、そうした行動特性も把握しておくべきです。
もう一つは、調整です。日本企業では、会議の前に関係者へ説明しておく「根回し」が非常に重要になります。さらに、これは海外企業でも同じですが、普段から定期的にレポートを提出し、関係者に情報を共有しておくことも大切です。突然、「システムを導入したい」「改善のために投資を承認してほしい」と伝えても、ほとんどの場合は承認されません。
普段から、インシデントの件数やユーザーからのリクエストを、統計的かつ定量的に、定期的に報告する必要があります。具体的には、月次のICTプロジェクト報告やICTサービスデスク報告などです。こうした報告書は、内容が退屈だと思われがちです。しかし、読まれるかどうかにかかわらず、ステークホルダーに毎月報告し続けることが大切です。それが信頼を生み、いざというときの調整に役立ちます。

こうしたことを書いているのは、管理職研修が昔から行われている今だからこそ、基本に立ち返ってほしいという願いがあるからです。管理職研修は、「仕事の管理」と「人の管理」に分けて行われます。これは、リクルートでも日能研でもどこでも基本は同じです。
「仕事の管理」の基本はPDCAです。つまり、計画、実行、確認・チェック、調整を行うことです。この考え方を、自分のコミュニケーションプランにも取り入れます。
会議では、計画を確認し、実行結果をチェックします。そのうえで、次のアクションプランを決めます。この会議を定期的に行うことで、その都度PDCAのサイクルを回せるのです。

そして、もう一つが「人の管理」です。こちらには、決まった教科書がありません。人によって違い、会社の環境によっても異なるからです。
大切なのは、すべてのことができる人材はいないということを認識することです。大谷翔平選手のように、打つことと投げることの両方に優れた社員はいません。しかし、誰にでも必ず特徴があります。その特徴を上司がどう生かすかが重要です。それによって、本人は自信を持って仕事に取り組めます。
さらに、自信をつけることで担当できる仕事の幅が広がり、成長にもつながります。こうした配慮を管理職がふだんから、きちんと行っているかが問われます。単純に部長や役員から言われたことをすぐ実行するだけでは、部下たちはプレッシャーに耐えられません。そのような状態では、いつまでたっても同じ場所にとどまることになります。
何事も基本や原理原則に立ち返り、全体を俯瞰して見ることが大切です。そして、自分自身を評価し、5つの管理機能が機能しているかを確認します。「人の管理」と「仕事の管理」がうまくいっているかどうかも、定期的に振り返る必要があります。
これも、いわゆる自分に対するPDCAです。こうして、自分自身も成長していくのです。
