AIは平凡な文章表現に感じる

■AIは平凡な文章表現に感じる

私は原稿を書く際、AIツールを搭載した校正ソフトを利用しています。このソフトはとても便利で、接続詞や「て」「に」「を」「は」などの誤りがあると指摘してくれます。ほかにも、「読みやすくリライトする」や「感情的に書き換える」といった機能が用意されています。

確かに校正機能で「読みやすくリライトする」を選ぶと、文章は読みやすくなります。しかし私としては、納得できないAI特有の表現も多く見つかります。そのため、これまで全文をAIだけでリライトしたことはありません。明らかにおかしい表現や読みにくい部分を指摘されることはありますが、すべてそのまま修正案に従うことはしていません。

なぜなら、AIツールが出すのは一般的で、多くの人に無難な表現ばかりだからです。読んでいると、どうしても平凡でおもしろみに欠けると感じてしまうのです。私の本を読んでくださった何人かの読者は、「情景が目に浮かぶような表現と文章の書き方ですね」とよく言います。自分では意識していませんが、読み手には、文章の中で描かれた情景が自然と頭に浮かぶようです。

■ごつごつした表現がいい

AIツールを使って校正した際、なぜ情景が浮かぶ表現と浮かばない表現の違いが出るのかと考えました。最近、その理由が少しずつわかってきました。

例えば、次のような表現がありました。

(原文)
部下が悩んでいるので職場の隣にあるケンタッキーフライドチキンに行きました。その社員はもともと話がとても長いのが有名でしたが、私は、案の定、たった1杯のコーヒーで4時間も缶詰になるのです。

これを校正ツールにかけると、「缶詰」という表現が消えてしまいます。

(校正)
部下が悩んでいたため、職場の隣にあるケンタッキーフライドチキンに行きました。その社員はもともと話がとても長いことで有名でしたが、やはり今回も、私はたった1杯のコーヒーで4時間も席を離れることができませんでした。

「缶詰」という表現は一見するとふさわしくないようにも思えますが、あのとき私は満員電車で身動きが取れないような気分になりました。だから「缶詰になる」という言葉を使ったのです。

日本語には、このように行間やコンテクストがあります。読者が行間を読むことで、想像を膨らませられるのです。もう一つ、私の母について書いた例も紹介します。

(原文)
母は都合が悪くなるとすぐに私の子供の頃の話や、いじめられて帰ったときの話を急にしだすのです。そうされると私の頭は違う方向に向いてしまいすっかり彼女のペースになってしまいます。

(校正)
母は都合が悪くなると、すぐに私が子供だった頃のことや、いじめられて帰宅したときの話を急に始めます。そうされると、私はつい話題をそらされてしまい、結局は母のペースに巻き込まれてしまうのです。

ここで「頭は違う方向に向いてしまい」が「つい話題をそらされてしまい」に変わっています。この「頭」という言葉には、実際に顔の向きを変えてしまうようなイメージを込めています。母の話で急に話題が変わると、頭の向きまで変わってしまう、そんな雰囲気を伝えたかったのです。こうした表現のほうが、読者にもより情景が浮かびやすくなるのではないでしょうか。

■情報整理は優れている

このように、AIが作る文章や説明文は、読んでみると容易に理解できます。しかし逆に言えば、平凡で面白みがなく、ありふれた表現が多いため、想像力をかき立てられることがあまりありません。

ただし、AIツールには既存の情報を上手にまとめるという強みがあります。たとえば、ある日「黒木亮祐という人は」とGoogleで検索したところ、私についてさまざまな情報が出てきました。

それらの内容は、本やブログに書いたこと、自分の経歴などがしっかり記載されていました。驚いたのは、それらがとても分かりやすく、論理的にまとめられていたことです。自分ですらここまでうまく要点を箇条書きにはできないのでは、と思うほど整理されていたのです。

さらに、「黒木亮祐氏の業務改革の思想は何ですか」と尋ねてみると、過去に自分が書いたブログや本の内容まで細かく表示されました。しかもとても分かりやすくまとめられており、私の本よりも読みやすいと感じるほどです。ただし、あまりに理路整然としているので、読んでいるうちに自分のことが他人のように思えてきます。しかし、よく見ると内容そのものは、まさに過去の自分の表現と一致しています。

やはりAIは使い方次第だと思います。現段階のAIは「まとめる」「既存の知識を整理して解説する」といったことがとても得意です。ですが、おそらく近い将来には、行間を読み取り、感情を表現したり、読者の想像を刺激したりする文章も生み出せるようになるのではないでしょうか。

時代とともにAIは進化しますが、みなさんの個性を失わないよう、うまく活用し、決してツールに使われるだけにならないよう注意してください。