サッカースペインリーグには、バルセロナやレアル・マドリードといった強豪チームがあります。フランスにはパリ・サンジェルマン、ドイツにはバイエルン・ミュンヘンという強豪チームがあります。
これらのチームに所属する選手は、優れたテクニックを持つプレーヤーばかりです。1人で状況を打開できるドリブル技術や、正確で強烈なシュート力を備えています。また、どれほど屈強なフォワードを相手にしても体を張り、ボールを奪って守備をするディフェンダーなど、非常に高い能力を持った選手がそろっています。
こうしたチームには、グアルディオラやモウリーニョといった有名な監督がいます。さらに、古くは「瞬間湯沸かし器」と呼ばれた、マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンもいました。

優秀な選手がたくさんそろっているのに、監督はいったい何をするのだろうと、ある時期に疑問に思ったことがあります。選手が優秀すぎると、監督はやることがないのではないかと考えたからです。関連する本も買いながら、その役割について考えました。
実際に、毎週欧州サッカーを見ています。結局のところ、監督の役割は、選手を励ましてモチベーションを高め、良いコンディションで試合に臨ませることに尽きるように感じます。
そのためには、監督の人格も含め、選手とのコミュニケーション力が極めて重要ではないでしょうか。例えば、かつてバルセロナに在籍していたメッシ、スアレス、ネイマールは、「MSN」と呼ばれていました。この3人が活躍していた時期に監督を務めていたのが、ルイス・エンリケです。
彼は強いリーダーシップを発揮し、選手に規律を守らせることを徹底していました。また、マスコミから選手を守ることにも尽力し、選手たちから信頼されていました。このような監督の能力が選手のやる気を引き出し、個人の技術を十分に発揮させます。その結果、選手は自ら状況を打開しようとチャレンジするのです。

さて、会社ではどうでしょうか。ここでも同じことが言えます。部門長は社員のモチベーションを高め、やる気を引き出し、それぞれが自律的に行動することを期待します。ただし、皆さんはこう言うかもしれません。「メッシやスアレスのようなテクニックはない」と。
その場合は、中間管理職がコーチとしての役割を果たす必要があるのでしょう。仕事の進め方や報告の方法を教え、社員が力を発揮できるよう支援するのです。
ここで思い出すのが、サイモン・シネックの「ゴールデンサークル」です。彼のコンセプトでは、中心に「Why」があり、その周りに「How」、いちばん外側に「What」があります。つまり、中心にある「Why」は部門長の役割です。なぜ取り組まなければならないのかを、しっかりと伝えます。そして、その方法である「How」を現場で指導しながら進めるのが、コーチ役を担う中間管理職です。最後の「What」は社員の行動となり、会社の成果として表れます。
では、「why」、「how」、「what」のうち、どこがいちばん大切なのでしょうか。もちろん、中心にある「Why」です。社員に目的意識やモチベーションがなければ、たとえ優秀な選手がいても、良い成績は残せません。
これは、バルセロナやレアル・マドリードといった強豪チームにも当てはまります。どれほど優秀な選手がいても、監督のマネジメントが悪ければ、選手たちの考え方がばらばらになり、優勝することすらできません。

サッカーのルールは、どの国でも変わりません。同じように、会社の規定や方針も簡単には変えられません。その条件の中でチームを率いる部門長は、メンバーのモチベーションを高め、ゴールまで導く必要があります。そのために最も効果的なのは、メンバー1人ひとりがチームのために自ら工夫し、状況を打開することです。そうした考え方に選手たちを導くことが、部門長の大きな仕事ではないでしょうか。
ITリテラシーや相手を思いやる気持ち、メンバーと協力して物事を進める力は、昭和時代よりも大きく高まっているはずです。それにもかかわらず、昭和の上司は、いまだに若い社員を子ども扱いしていないでしょうか。
社員に自信を持たせ、常にチャレンジできるよう促し、社員がモチベーションを高く保つことが大切です。まさに、これがバルセロナやレアル・マドリードに通じるマネジメントなのです。
