■魚屋さん
私がIT部門の責任者を務めていたとき、「ホイケンタ」というあだ名の社員がいました。明石家さんまさんが当時ネタにしていた言葉をもとに、親しみを込めて付けたあだ名です。ユーザーからリクエストがあると、何でもホイホイと受け入れて引き受けてしまうことが由来でした。
その社員は動きが非常に俊敏で、すぐに対応します。しかし、少しでも障害や難しい点があると、そこで止まってしまうのです。
もちろん、立ち止まって対策を考えることは誰にでもあります。ただ、考えている間にも次々と別の依頼が来るため、そちらの対応を優先してしまいます。その結果、対策を考えようとしていた依頼が次々と溜まっていくのです。やがて、ユーザーから「あの件はどうなったのか」「なぜ対応してくれないのか」といったクレームが寄せられます。

私は、これを「魚屋さん」と呼んでいます。魚屋さんは、常に新鮮な魚を仕入れ、すぐにさばいて売ります。しかし、さばけずに在庫として残ると、魚は腐ってしまいます。
それと同じように、ユーザーからのリクエストを次々と引き受けても、処理しきれずに溜め込めば、やがて問題になります。最終的には、ユーザーからのクレームにつながるのです。
依頼にすぐ対応することは、とても素晴らしいことです。大切なのは、必ず期限を決め、未処理のリクエストをレビューすることです。これは、私が提唱している、いわゆる「プラン&レビュー」の考え方です。
どのリクエストが届き、どれが保留になっているのかを確認する機会を、定期的に設けます。その確認は、チームメンバーと一緒に行うことが大切です。もし自分一人で対応できなければ、別の担当者に引き継ぎます。また、すぐに対応できないと判断した場合は、その理由と見通しをユーザーにきちんと説明します。

■プロジェクト運営では
このような「魚屋さん」的なアプローチは、個人だけでなく、プロジェクト運営にも当てはまります。さまざまなタスクや課題が次々に発覚し、それらをプロジェクトに吸収してしまうということです。
気がつけば、取り組むべきタスクが増え、それらを報告するためのコミュニケーションの回数や内容も膨らみます。その結果、処理しきれなくなるのです。
タスクや作業が増えてきたら、それらを整理し、まずプロジェクトを分ける必要があります。それぞれにリーダーを置き、個別にコミュニケーションプランを作成します。
すべてを1つのプロジェクトとして進めると、ステークホルダーは、それぞれの状況を把握しにくくなります。つまり、全体を俯瞰して見ることができなくなるのです。
そのため、プロジェクトの規模にかかわらず、最初からプロジェクト体制を見直すための振り返りの機会を、コミュニケーションプランに組み込んでおくことが大切です。つまり、会議体にも「賞味期限」を設け、体制をレビューする機会を事前にスケジュールしておくのです。

例えば、毎月末にプロジェクトレビューレポートを作成し、その月の活動を振り返ります。うまくいった点や問題点、改善すべき点を整理し、その結果をもとに、次に何をするかを考えます。ここでは、やることとやらないことをはっきりさせ、優先順位を付けます。次々にすべてを受け入れては、まさに魚屋さんになってしまいます。
ポイントは、「何かおかしい」「変えたほうがよい」と感じる前に、あらかじめセルフチェックの機会を設けておくことです。会議スケジュールに「プロジェクト振り返り」を組み込み、3カ月ごと、あるいは半年ごとに実施します。
時間が経つにつれ、自然と課題やタスクは増えてきます。それらを整理して、やることとやらないことを決めます。やるのであれば、プロジェクトを分割するなど、何らかの対策を立てるべきです。そのための機会をコミュニケーションプランに組み込み、あらかじめ会議体に設定しておきます。
月次レポートや四半期レポートなどを通じて、過去の活動を定期的に振り返り、現在の運営方法を自己評価します。その結果をステークホルダーに報告し、必要に応じて計画を変更します。
そして、振り返りを行い、次のアクションにつなげます。これはPDCAの考え方にも通じますし、私が提唱している「プラン&レビュー」とも同じ考え方なのです。
つまり、誰かに何かを言われてから修正するのではなく、自ら修正の機会を設け、適切な計画や体制で進めていくのです。
