職場に蔓延する閉塞的な雰囲気

日本の多くの職場では、社員が自由に意見を言えず、閉塞感が広がっていると感じます。これは、私が海外や外資系企業で25年以上働いた経験から特に強く思うことです。

このような環境で働く日本人社員は、自分の考えを自由に表現できず、仕事へのモチベーションを失いやすくなっています。我慢強い日本人であっても、この課題を放置してしまうと、企業の生産性が下がり、組織の健全な成長も妨げられるでしょう。

私がコンサルタントとして以前関わった職場でも、同じ問題が深刻でした。オフィスには静かで重苦しい雰囲気が漂い、100名近くが隣同士で座っているのに会話はほとんどありませんでした。社員は疲れ切っているようで、笑顔もなく、悩みを相談する場すらありません。

そして私の着任から10か月で、部門全体の7割以上の社員が入れ替わるという高い離職率となっていました。特に、意欲や能力がある若手ほど早く辞めてしまうという悪循環が見られました。

本来、若手社員は新しい知識やモチベーションを持っています。しかし、年功序列が強く、自分の意見を言えない職場では、指示されたことだけを淡々とこなす受け身の姿勢にならざるを得ません。さらに、指示以外のことを自主的にしようとすると怒られる風土が残っています。正社員として入社した彼らは、簡単に職場を変えることもできず、毎日つらさを抱えて働いています。

私自身は海外での経験を通じて、自分の会社ではできるだけオープンな職場づくりを心がけてきました。しかし、伝統的な日本企業にはいまだにトップダウンや閉鎖的な組織文化が色濃く残っています。

特に大手や歴史のある企業ほどその傾向は強く、そこにいる社員は「これが普通」「どこの会社も同じ」と思い込んでいるかもしれません。ですが、外部から入ると、非効率な業務や形だけの仕事の多さに驚きます。

たとえば、会議の進め方にも違いがはっきりと表れます。アメリカの職場では、事前にアジェンダ(議題)を用意し、役割分担(進行役、タイムキーパー、資料作成担当など)が明確です。会議終了後は議事録やアクションリストの共有が徹底され、会議の効率が大きく向上します。

こうしたわかりやすい仕組みがあることで、仕事が着実に前進することを若手社員も実感できます。一方で、日本の会議は偉い人の一言で流れが変わったり、議題や資料があいまいなまま始まったり、議事録が残らないことも多いのです。年間のスケジュールすら決まっていないことも珍しくありません。若手社員は「上」の言うことを聞いて、言われたことだけをやるしかありません。

 

■若手の知識活用と上層部のスキル不足
若手社員は、パソコンやタブレット、スマートフォンの活用などデジタルリテラシーに優れています。彼らが持つデジタルスキルを活かしつつ、よりコミュニケーション力も高めていく必要があります。

一方、組織の上層部には、社内政治が忙しく、会議の準備やスケジュール管理、業務設計や進捗管理などの基礎的なスキルがアップデートされていないことを感じます。

未だに、「箇条書きA4用紙1枚以内」といった昭和時代の指示を出しています。いまや、レポートは決して印刷しませんし、シェアポイントなどで簡単に共有できて、レポートは独り歩きしていきます。

こうした時代に、体言止めや簡潔すぎる報告はただ誤解を招くだけですし、意図は身近な社員にしか伝わりません。ページ数にこだわらず、具体的にわかりやすく書かなければいけません。こうした40代、50代の管理職者が若手が望む具体的なスキルを指導できるはずはありません。

スマートフォンも1人1台のノートパソコンもなく、世界中とすぐにビデオ会議ができるTEAMSやZOOMもない時代から、コミュニケーションや報告の仕方も変わってきていることにいまだに気づいていないのです。

こうした新しい仕事の仕方への理解不足は、若手の成長や業務理解の妨げとなり、組織の停滞を招いていると考えます。

今、必要なのは、ビジネススキルやコミュニケーションの基本について改めて勉強し、若手、中堅社員へ具体的に指導できる能力です。それがコミュニケーションの機会を作り、職場環境を見直すきっかけにもなります。

高い技術力や良質な製品がある企業は短期的には生き残ることができますが、こうした組織運営の問題を放置すれば、いずれ行き詰まりや不正の発覚など、深刻なリスクに直面しかねません。

私は「30代、40代のやり直しビジネススキル」という本を出版しましたが、実は一番読んでほしいのは社長や経営層の方々です。現場や中堅社員からは「今さらだけれど初めて気付いた」という声が多く届いています。

経営層が自らが組織運営の基本中の基本に立ち返り、報告の仕方、計画の考え方などを若手社員と一緒に勉強していくことで、コミュニケーションの機会が生まれ、そして、オープンで健全な職場づくりへと向かう一歩になるのではないでしょうか。