▪️昭和のファイリング
1990年代になると本格的にパソコンが導入されました。当時はまだデスクトップPCを共有するといった形でしたが、それでもなお、Excelなどの表計算ソフトが登場したことで、それまで時間をかけてマニュアルで行っていた「集計」「検索」「ソート(並び替え)」が瞬時にできるようになり、事務効率が飛躍的に向上しました。
では、それ以前はどうだったのでしょうか。1980年代までは、書類を見つけやすくするために、ファイリングの技術がセミナーなどで解説され、コクヨやキングジムのフォルダを使って書類整理をしていました。
当時はオフィスのスペースも限られていたので、「移し替え」や「廃棄」といったルールを設けて書類を管理していました。一方で、分類については、探しやすい見出しを付けたフォルダを作り、フォルダボックスやバインダーで管理していました。

1990年代に入り、野口悠紀雄さんの『「超」整理法』が人気となり、ファイリング技術の一つとして、時系列に書類を並べていくという方法も流行しました。これは、人は時系列で記憶するため、種類別にファイルやフォルダを作るのではなく、時系列に並べていくという考えです。
つまり、営業会議、経理会議、経営会議の資料や販売管理資料といったものが自分のところに次々と回付されてきた場合、来た順番にファイルしていくという方法です。
私も「〇〇年6月分」といったファイルを作成し、その月に使用したレポートや送られてきた書類を、届いた順にそこへ綴じていました。そして7月になれば、「〇〇年7月分」として新しいファイルを作成します。
こうすることで、ドキュメントをその都度、分類したり、インデックスをつけたりする必要がなくなります。そして、古いものから捨てていけばよいのです。
実際に私もこの方法を活用していて、「確かあれは去年の6月だったな」と思うと、去年の6月のファイルを見れば、そこに資料があるのです。当時は現在のようにデジタル化されていなかったので、さまざまな工夫が凝らされ、ドキュメント管理が行われていました。

▪️ドキュメント作成も飛躍的に効率化
レポートや集計表を作成するにあたっても、基本は電卓を使用します。ただ、打ち間違いで計算ミスが起こりやすいので、縦計と横計を照合するなどして、縦と横の合計が一致することを確認し、計算が正しいとわかるような表を作成していました。
今となっては、Microsoft Excelで瞬時にできてしまうので、1日の業務時間で当時はいったい何をしていたんだろうと思ってしまうくらいです。
また、文書作成においても、その都度、最初から書かなければなりませんでした。今のように以前書いたものをコピーして、部分的に変更して済ませる、といったことはできませんでした。作成した文章の配布も、コピー機でコピーをした後、宛先の方々に配っていました。
現在では、メールなどで一斉送信できるため、こうした配布の作業は減っているはずです。
そう考えると、1990年以前の仕事のやり方と、現在の仕事のやり方では大きく違っています。つまり、集計したり、検索したり、ファイリングしたり、並び替えたり、コピーして配布するといった作業が大幅に減っています。

▪️ストレージ内で氾濫するデータ対策
では、実際はどうでしょうか。皆さんの仕事場を振り返ってみてください。いまだにそういうことをやっていませんか?例えば、資料を探す、データを探す、データを並べ替えるといった作業で、デジタル上のフォルダの中を行き来して、時間に追われていませんか。
そう考えると、ファイリングを取り巻く状況自体は、1980年代の業務と本質はあまり変わっていないのかもしれません。本来は、集計、検索、並び替えが瞬時にできる現代ですから、作業効率は飛躍的に改善されているはずです。
しかし、デジタル化したからといって、ファイリングが不要かというと、そうではなく、データのアーカイブ内でも整理・整頓は必要です。特に、目の前の机が書類で山積みにならない時代だからこそ、ファイリングに無頓着になりがちです。この場合、探しやすくするには、80年代のファイリング技術が役に立つのです。
例えば、私はいまだにハードディスクの中では、時系列にフォルダを作っています。まず年度ごとに大きなフォルダを作り、その下に1月〜12月の月ごとのフォルダを作ります。そして、その月のフォルダ内に作成した資料や受領した重要な資料を格納するのです。

SharePoint上にあるから、わざわざファイリングしたりまとめたりする必要はないし、そこを見に行けばいいだろう、と思う人もいるかもしれませんが、結構、探すのに時間がかかっているはずです。
また、SharePointのファイルは、他のメンバーと共有しているため、勝手に変更したり編集したりすることができません。まして、誤って削除したり変更したりすると、他のメンバーに迷惑をかけてしまうのです。
SharePoint上の資料は、あくまでも自分のバックアップ程度だと思っておくと良いでしょう。エクセルやパワーポイントのデータを利用して、何か作業をするのであれば、まずはローカル環境にダウンロードして、そこで編集・加工を行うのです。
この場合、ローカルのハードディスクに落とした方がパソコンの動作も速くなり、作業も早く済みます。ですから、ハードディスク内の管理もしっかりしておかなければいけないのです。
月ごとにフォルダを作成してそこにデータを整理しておけば、その月のデータは簡単に探すことができます。また、保存するファイル名にも日付を付けるとさらに便利です。
なぜなら、同じファイル名でも更新版と未更新版が混在することがあるためです。更新日時から判別することも可能ですが、確実に最新版だとわかるようにするには、ファイル名に日付やバージョン情報を入れる方法が有効です。

さらに、ファイルを参照しやすくする工夫として、よく使うファイルやデータへの「リンク集」をPowerPointで作っておく方法もおすすめです。
たとえば、ネットワーク関連のプロジェクトがあるなら、関係する資料やチャートのリンクを付けたスライドを作成します。ほかにもプロジェクトの資料や組織図、連絡先一覧などをまとめてリンク集として作り、PowerPointファイルをデスクトップに置いておくだけで、効率的に活用できます。
ストレージ容量に余裕がある今の時代だからこそ、不要なファイルもどんどん溜まっていきます。ぜひ、昭和のファイリング技術も活用してデータを整理し、効率良く保存してライバルと差をつけてください。まずは、データをすぐに取り出せる状態にすること、そして「探すのに時間がかかる」問題を解消することが大切です。