最近では、手書きのノートや手帳を持っている人をほとんど見かけなくなりました。今はほとんどがペーパーレスの時代で、紙に印刷する機会も減っていると思います。
Windowsのメモ帳やMacBookのメモ機能に、必要なことを都度書き込み、紙のノートを使ってメモしたものをわざわざタイピングして報告書を作成することも、ほとんどなくなりました。確かに、ノートに書いた内容をもう一度整理してデジタル化するのは、とても手間がかかります。
さらに、Microsoft Teamsの普及によってチャットでのやり取りが増え、メールが減ってきたようにも感じます。チャット上で思いついたことをすぐに打ち込んで誰かに伝えることができる時代になりました。チャットを使えば、誤送信も少なく、特定のメンバーにしか情報が届かず安心です。さらに、ファイルもフォルダー内でリンクを貼って共有できて、とても便利です。

私自身も、普段はMacBookのメモ帳に入力して記録しています。しかし、ふと、手書きの手帳の良さとは何だろう、と考えることがあります。脳科学などの本によると、手で書く場合、考える速度や目で追う速度と比べて書くスピードが圧倒的に遅いため、逆に記憶には残りやすいそうです。私もその通りだと思います。
たとえば、江戸時代にはお経を何度も書き写す「写経」という習慣がありました。単に書き写すだけで本当に意味があるのかと思いますが、私の考えでは、「文字を見る」「見て考える」ことと「手で書く」という動作速度の違いが頭の中に時間差を生み、その時間差が記憶への定着を助けているのではないかと思っています。
こう考えると、手書きの手帳に良い点があると感じます。手書きの手帳に話を聞きながらメモとして素早く書き取り、それを後から読み返して整理し、箇条書きにまとめて、しっかりとしたレポートを作ることができます。この作業は、頭の中で情報を一度きちんと整理するための大切なプロセスです。とはいえ、だからといって全員が手書きの手帳を使うべきだ、とは言っていません。

実際、私もMacBookのメモ帳に入力し、それをさらに整理してレポートを作成しています。つまり、最初に記録した内容をその後で再編集する、そのプロセス自体が大切なのだと思っています。
同じ内容を何度も読み返し、異なる形でまとめ直す作業や、プレゼンテーション用に編集する作業をくり返します。そうすることで情報の全体像を整理し、自分の考えの誤りや不足点にも気づけるのです。
「手帳は見返すためにある」とよく言われます。しかし、今のMicrosoft Teamsのようなチャットで送る情報は、あとで見返される機会が少ないのではないでしょうか。
自分で書いたもの、他人から受け取ったものを何度か見返すことで、情報を整理し、目的に合ったレポートやプレゼンテーションをつくることができるのです。一見、手間に思える書き写しや読み返しも、実は脳の働きにとってとても大事なプロセスだと私は考えています。

私の場合、まず「デイリーアクティビティレポート」として毎日の出来事を箇条書きで記録し、それをメンバーと共有しています。週末には1週間分のメモをもう一度見返して「ウィークリーレポート」を作成します。この時は単純にデイリーレポートをつなげるだけでなく、全体をウィークリー用に箇条書きにして構造を整理します。
たとえば、同じ種類のプロジェクト会議はまとめて一項目に整理したり、重要でない内容は削除したりします。そして本当に重要なことだけを残して、最終的なウィークリーレポートに仕上げるのです。
さらに、このウィークリーレポートをPowerPointに整理し、プロジェクト事務局内での週次レビューに使っていますPowerPointにする際は、ウィークリーレポートからさらに重要な点だけを抜き出し、図表を加えるなどして見やすくします。また、このPowerPoint資料をさらに編集して、月例のステアリングコミティーや経営会議などの資料も作成しています。

こうしてふり返ると、「デイリーアクティビティレポート」「ウィークリーレポート」「週次レビューPowerPoint」、そして「ステアリングコミティー」など、何度も読み返す機会が生まれます。この「読み返す」という作業を通じて、頭の中で情報が整理され、目的に合わせたレポート作成や、特定の人向けのプレゼンテーション資料作成などが可能になるのです。
オフィス365で簡単に情報共有ができる時代だからこそ、このようなレビューの時間が不足しがちではないかと感じます。情報が「送りっぱなし」になり、レビューが行われず、チャットが増えると「どこでいつ誰が何をチャットしたか」も忘れがちですし、探すのにも時間がかかります。
だからこそ、チャットでその場の思いつきを発信するだけでなく、「1日のまとめとしての報告」「週単位でのまとめ」「定例会議や経営会議での報告」のプロセスや機会により情報を見返すことが大切です。何度も見返すことで記憶が深まり、1つのテーマについてより深い洞察が生まれるのです。
「話す」「見る」「聞く」といったスピードに比べ、「書き写す」作業には時間がかかります。しかし、だからこそ脳が刺激され、考えが深まり、事実を整理して、わかりやすい報告書やプレゼンテーションが作れるのです。
ぜひ、手書きのノートも忘れないでください。それ自体も悪くありません。また、メモ帳に入力する場合でも、必ず見返してその日を振り返ること、週ごとにまとめ直すことを続けていけば、文章力や考察力、物事の整理力も高まっていきます。
最初は二度手間に感じるかもしれませんが、江戸時代の写経のように、書き写す作業が脳を刺激して思考を深め、記憶にも残るのです。
