▪️報告の仕方を教えること
部下育成とは、部下に報告の仕方を教えることであると気づいたのは、私が30代でソニーグループに勤めていたときでした。そのときの上司は、井深さんや盛田さんと一緒に働いていたご経験のある方です。ある日、彼から既に黄色く焼けてしまった1枚の用紙を渡されました。
その用紙は、おそらく当時、社内で行われた研修の資料だったと思います。そこには「報告の仕方を教えることが部下育成だ」とはっきりと書かれていたのです。
それを初めて目にしたとき、私はとても驚きました。私は、報告の仕方ではなく、仕事の進め方やシステムの使い方、帳票の作り方を覚えることが部下育成だと勘違いしていたのです。
この考えを改めて本当に理解できたのは、自分自身が多くの部下を持つ立場になってからでした。報告の仕方が上手な部下は、仕事を任せても安心できます。そのため、自然と次々に新しい仕事を任せたくなります。結果として、こうした部下は昇進していくのです。

▪️会社としての問題
会社の業績が上がらない主な理由は、多くの社員にビジネススキルの基礎が身についていないことにあると、このブログでも以前書きました。
つまり、正しい情報が整理されて、コミュニケーションがよく取れて、効率的に組織として行動できるには、縦横の効率的なコミュニケーションが必要で、そのために、報告の仕方は非常に重要になります。それがうまくいかないと、社長は「裸の王様」になってしまいます。
計画の立て方や報告の仕方、プレゼンやコミュニケーションの技術を、現場の実践を通じて習得した社員は、昇進し、頼りにされる存在になります。
なぜなら、普通、仕事は時間とともに自然と身につくからです。仕事上での間違いがあれば、直ちに周囲や上司に指摘され、それを直しながら仕事を進めることができます。しかし、報告の仕方は意識的に訓練・習得しないと、なかなか身につかないものです。
報告の方法にもさまざまな選択肢があります。たとえば、口頭や会議、電話、レポートなどがありますし、レポートの場合もMicrosoft Word、Excel、PowerPointなどの形式があります。さらに最近は、チャット機能のあるTeamsを利用するケースも増えています。そのため、どの方法でコミュニケーションや報告をするかはますます複雑になっています。
こうした環境の中で、数ある選択肢から状況に合った手段を素早く選び、適切なタイミングで報告するには、かなりの技術が必要です。これを「技術」と認識していない会社は、組織運営がうまくいっていないと思っています。なぜなら、経営陣にタイミング良く、わかりやすく正しい情報が届かなくなってしまうからです。

▪️報告力のある組織を作るために
ここで大切なことを2つ挙げます。まず1つめは、社員一人ひとりが報告力を高めることです。そのためには、正しい文章作成力が必要です。印刷する機会は少なくなっていますので、用紙のページ数などにこだわらず、正確に書く訓練を重ねることが大切です。
具体的には、箇条書きで構造化する、体言止めを避ける、未来形で文章を組み立てるといった基本動作です。また、ExcelやWord、PowerPointなど、それぞれのツールの特徴を理解して使い分けることも必要です。
Excelはその後の変化を超えられること、Wordは正式な文書、PowerPointはその後の編集がしやすく、会議用資料としては適切です。こうした特徴をつかんで、個人の報告作成スキルを高めることが求められます。

2つめは、会社として報告制度を整備することです。具体的には、会社の会議体と報告制度の整理と運用が必要です。つまり、各会議に明確な目的と決定事項、参加者を定め、情報共有や意思決定がきちんと行われるようにします。そして、会議体を整理したうえで、報告の方法を決めることが必要です。口頭で伝えるのか、レポートとして提出させるのかを明確にします。
オンライン会議が増えている今、必ず報告書としてまとめ、全員の前で発表させる訓練も必要です。自分で書いた内容をみんなの前で発表することは、個人の報告スキルアップにもつながります。
会議体には、チームミーティング、課レベル、部レベルそれぞれのミーティングがあり、参加者をリスト化して定期的に更新していきます。その頂点には経営会議があります。定期的な経営会議で、各部門で話し合われた内容がきちんと上位に伝わる仕組みを作ることが重要です。
そうしなければ、社長はまさに「裸の王様」になってしまいます。このように、社員一人ひとりのスキルアップと、会社全体としての会議や報告制度の整備が、報告力向上のためには不可欠です。

▪️管理職者の報告は当然の義務
私が以前勤めていたソニーグループの会社では、課長職以上は必ず月報を社長宛に提出しなければなりませんでした。この月報の提出先は社長です。その理由は、1つの部門の責任者として、その月の活動結果や翌月の計画を報告する責任があるからです。
確かに、責任ある立場であれば、自分が担当した業務の結果と、今後どのように進めるかを報告することには大きな意味があります。
こうした報告制度と会議をミックスさせて、組織内の血流が効率的に流れるように仕組み化することです。それがうまくいってない場合、効率化がされていないために、無駄な行動が多く、会議の時間も長くなりがちです。
会社の経営陣や管理職の方がこのブログをご覧になっていると思います。ぜひもう一度、「報告」の重要性について考えていただければと思います。
