▪️文章として書き残す
自分の過去の出来事を客観的に文章に書けるようになるまでには、ある程度の期間が必要だと思っています。冷静に客観的に描写するためには、当時のさまざまな感情を記憶という一つの冷たいかたまりに閉じ込めてしまわなければなりません。
これまでの出会いや運命としか思えない出来事を書き留めることによって、それらは冷静な記憶となり、「成仏」するのです。そして、誰かの前で再び話すことはなくなります。
それは、文章として原稿に書き落とすことで、その話を自分の記憶の中の奥底にしまいこんでしまい、あえて誰かに伝えたいとか、誰かに話したいという感情が消えていくからです。ただ、自分が書き留めたことを、改めて読み返すとその記憶が感情とともに蘇ってくるのです。
◾️昔の自分に励まされる
私の海外勤務の話は、私が30代の話です。今、過去の自分について、自分が書いた文章を読み返しながら振り返ると、当時の私は本当によく頑張っていたと感心します。
読んでいくうちにその当時の自分の姿を心というスクリーンに思い描けるのです。無知がゆえに、ただひたすらに前に突き進むしかなかった自分の姿に、今の時代に生きる私が励まされるのです。
今となっては、経験も知識も当時よりは豊富です。しかし、当時の私は、まだまだ駆け出しで、経験や知識が限られていました。
しかし、目の前にある問題を真正面から向き合い、ただ、ひたむきに、そして、懸命に、たとえくじけそうになっても、何とか少しでも前に進もうとするその姿に励まされるのです。
もし、当時の自分が目の前にいたとしたら、「ぎゅっ」と抱きしめてあげたい気持ちになります。
そして、こう言いたいのです。
「お前は本当によくやってる、この調子で行け、絶対に成功する。自分を信じて前に行け、お前は絶対大丈夫」
当時の私は毎日が不安で、このままでいいのだろうか、どうすればもっと良くなるだろうか、と常に不安という暗い闇の中で毎日を過ごしていました。
そして、その不安こそが、何とかしなければいけないという感情から、自分のモチベーションになったのです。決して、誰かから評価されたいとか、褒められたいなど、そういった考えは一切なく、ただ純粋に、目の前にいる困っている人たちに対して、とにかくうまくいくように何とかしようと思っていたのです。
自分の心の中は暗闇だったかもしれませんが、その姿は、30年以上経った今もなお、とても輝いて見えるのです。
◾️迷いと不安の中でもがく姿に励まされる
誰しも不安や焦り、経済的な困窮や、将来の不安などがたくさんあるはずです。その中で、道に迷いながらも、右に行ったり左へ行ったりしながらも、少しずつ前に進んでいくのです。
そうやって、ひたむきに一生懸命やっているあなたの姿を、20年後、あるいは、30年後のあなたはどう思うことでしょうか。
「本当によくやったね、苦労したよね、でも今の私があるのは君が頑張ってからだよ」
と声をかけてあげてください。
デール・カーネギーの『道は開ける』という本に書かれていました。
「悩みを解決する方法はない。ただ目の前のことに集中すればいい。目の前のことに集中することによって、すべてを忘れ没頭することだ」
私はこの言葉が大好きです。今は不安を抱えていても、とにかく目の前のことをただひたすらに一生懸命やるしかありません。なぜならば、今の自分にはそれしかないからです。そして、たった一人でも良いから「ありがとう」と言ってもらえるように、懸命に取り組んでいくことです。
人生の最後の日が訪れたとき、過去の出来事を思い起こすことでしょう。子どもの頃から、学生時代、結婚、家族、友人とさまざまな人に出会い、喜びや、悲しいことも共感し合えた映像が心に浮かぶはずです。そして「自分は本当によくやってきたよ、頑張ったよ」と思うことでしょう。